静か過ぎる部屋に自分の声を投げ込んでみても

もう、そこからは何も返ってはこない



go home




「チャンピオンともあろう者が昼間から家で寝転んでいるとは…情けない話だな。」


ふと、上を見上げれば翡翠の瞳を持った見なれた男の顔がある


「人んち勝手にあがり込んどいて何様だよ。」


「呼び鈴は何度も鳴らした。鍵もかかっていなかった。不用心なお前が悪い。」


最もな返答に返す言葉もなく

それでもなんだかやりこめられた感じがして、ただ彼を睨みつけた


「で・・・何の用?」


重い体をおこしながら、涼しい顔をした彼に尋ねてみる


「知らなかったな。お前に会うにはいちいち理由が必要なのか。」


「…だと思ったケド…。」


用もないのにあらわれるのはいつものこと

どうせ人をからかうかおちょくるかしかしないくせに

そんな今でさえ何の遠慮もなく、人の前髪を指にからめて弄んでいる

相変わらずの鉄仮面で


「何がしたいんだよ…」


「さぁな」


「てゆーか何時まで居据わる気だ。」


「オレとしては泊まっていってもいいんだが。」


「却下。お断り。」


本当は泊まられたってかまわなかった

食事をつくるのがほんの少し面倒になるだけだ

ただ




彼が帰ってしまった後の気分があまり良いものではなかったから





「わざわざウチに泊まることないだろ。ちゃんと家に帰れ。」








「お前には帰りを待ってる人がいるんだから。」








自分で言った言葉が胸におかしなわだかまりを残した、気がした

気づかれないようそっと胸に手をあててみた



相変わらず トクン、トクンと規則正しい音をたてていた



そんな最中、彼の手が自分の腹のあたりにあるのに気づいた

自分より一回り大きな身体に包み込まれ



それだけでオレの鼓動は音を乱す





「お前なぁ…ちゃんと人の話聞いて…」


「レッド」


不満を言う前に、落ち着いたトーンで自分を呼ぶ声が聞こえた

嗚呼、もうこれ以上、オレに反論出来るチャンスはないんだろう






「オレと一緒に暮らすか?」




突拍子もない、けど、どこまでも真っ直ぐな言葉

オレを包む腕の力が少し、強くなる




「・・・何の冗談だよソレ・・・。」


「そう思うならそれでかまわない。」


片手であごをつかまれ、無理矢理後ろを向かされて

鋭くも静寂を保つ翡翠の瞳しか目に入らなくなる


「けどオレは本気だ。」


そのまま顔が近づいてきたと思った刹那

唇に何か暖かいモノが触れた気がした


 


*    *    *    *    * 






「なんだ。結局帰るんじゃん。」


「帰れと言ったのはお前だろうが。いて欲しいならいてやるが?」


「いいっての。じゃ、またな。」


手をヒラヒラさせて見送るオレに何か不満があるようで

彼はそのまま帰ろうとはしなかった


「違うだろ。」


「は?」






「『いってらっしゃい』だろ?」


絶好のツッコミ所



のハズだった




自然と口角が上がってしまった事も自分で気づきたくなかったけれど




「いってらっしゃい」


「いってきます」



背中を向けたまま片手をオレと同じようにヒラヒラとさせ

彼はおとなしく去っていった






胸のわだかまりがいつのまにか鼓動の速さに変わっていたことは

しばらく彼には話さないでおこう










end


キリ番21400古雪様リク「グリレほのぼの小説」にございます。…これ…ほのぼのだよね?(聞くな)
久しぶりにグリレかいたので楽しかったデス。やっぱり熟年夫婦はこうでなくっちゃVv(自己満足)
何はともあれ古雪様。こんなんでよければもらってやってください。



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