Happy Dote



「何故こんな事に…。」


「なんでって…お前が言ったんだろ?『お前の欲しい物がどうしても思いつかないから
誕生日は出来る限りで何でも言う事1つ聞いてやる』って。」


「…確かに言ったが…」


納得ができないのかただ単に眠いだけなのか 

元々悪い目つきが重くのしかかった瞼によってさらに酷くなっていた



彼をそんな風にしてしまったオレのささやかな望み



「…だからと言って『8月7日の11時半頃から散歩に付き合え』ってのは…」


「いいじゃん、金かかんないし。」


「そーゆー問題じゃない。」


特別欲しい物がある訳でもなく

かといって今更彼に望むことなどなく



日常が(割と)幸せに満たされているものだから

彼にしてもらいたいことなどコレしか思いつかなかった



「誕生日が始まる瞬間に一緒にいたいってのはそんなめんどくさい願いかな?」


「別にそれは構わないが…わざわざ外にでなくてもいいだろう。」


「室内だとグリーンに押し倒されそうなので。」


図星だったのか彼はそれっきり黙ってしまった

『ソコは否定しろよ!』というお決まりのツッコミはあえてしないことにした



満天の星空


心地よく肌をくすぐる風


それに揺られる夏草



乙女達が喜びそうなシュチュエーションがここまでそろっているのに

自分達の会話にはロマンも色気もあったもんじゃない




別にそれでも構わないけど

ポケギアを見ると時計は11時58分

もうすぐオレの生まれた日がやってくる




「そろそろだな…8月8日。」


「そーだな、カウントダウンでもする?」


「勝手に1人でやってろ。」


「うっわ冷てー。」


オレの心を満たすには こんな他愛のない会話で十分だった



我ながら女々しいとは思うけど




「…レッド。」


「んー?」


「少し早いが…」


「何だよ…っ!?」


突然腕をつかまれ 強引に体をひきよせられる

時たま彼がみせるその強引さが嫌いじゃなかったりする



だからあえて抵抗しない



顔を極限まで近づけられて 瞳の中の深い森しか見えなくなる






「ハッピーバースデイ。」






いつもと同じ 軽く触れるだけの優しいキス

それでもオレの左胸は中々コレに慣れてくれない

いつもと同じように鼓動を速めてしまう



そのたびに 音が彼にばれてしまわないか心配になる






「…鳴ってる。」


「えっ!?」


「ポケギア。」



ふと我にかえると 上着の右ポケットに入っていたポケギアが

けたたましい音でうなっていた




「ハイ、もしも」


『レッド先輩ハッピーバースデー!!』


ポケギアの音よりけたたましい音が頭の中でキンキンと響いた


「…ゴールド?」


『先輩誕生日おめでとうゴザイマース♪12時ピッタリにかけたんすよ!おめでとう言ったの、オレ1番でしょ?』





12時ぴったり?






…ああ、そういうことか






横目でグリーンのほうを見ると 雰囲気をぶち壊されたせいか

またもや不機嫌そうな顔でオレを…イヤ、ポケギアを睨んでいた



「残念だけど…1番じゃなかったゾ。」


『えー!?オレがんばったのにー…』


「あはは、でもありがとな。」


なんとかこのやんちゃな後輩をたしなめ オレは電話を切った





「…12時ちょうどにしてくれたんだ?」


「…知らん。」


そっぽを向いて目を合わせないところを見るとそういうことなんだろう


相変わらず解かりやすいんだかそーじゃないんだか



「オレの誕生日には覚悟しとけ。」


「言われなくとも、ね。」






ハッピーハッピーバースデー トゥ 幸せボケしてるオレ







end



8月7日の夜中にマッハでかきあげたレド嬢ハピバ小説。計画性のない哀れな女のなれの果てですね。(何)
ゴーレもかきたかったのですが、やはり私の中ではグりレの愛には勝てないようです。



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